白い月~夜明け前のその空に~
足早にその場を去る彼女の心の中では、肌に感じるほのかな春風より、ずっとずっと暖かい春風で満たされていた。
(……まず本屋で絵本を選んで、頼まれていた食材を買って、家着いたら編み物の続きをしてそれから……、あと長澤のプレゼントも考えて…、瞬ちゃんと今日はお絵かきしようかな)
やる事を考えるだけで心が弾むのが分かった。
天気に恵まれた今日。
昼下がりの空の下、晴れやかな心で、彼女は行きつけのお店へとまっすぐ向かっていくのだった。
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――――三月中旬、お彼岸。
相園家、佐野家、それぞれのお墓参りへ、みんな揃って出かけた。
瞬は陸の見よう見まねで、母が眠る墓前にしゃがみこんで手を合わせる。
お墓参りに来ることは初めてではないようで、少しずつ理解していっているようだった。