白い月~夜明け前のその空に~
「おはな、きれーだね」
興味深気にキョロキョロ周りを見ていた瞬は、優月の持っていた花に気づいた。
「うん。喜んでくれるかな」
「うん!うれしいよ!おはないっぱいだもん。あかと、きーろと、これは…」
花束を覗きこみ、指で差しながら色の名前を上げていく。
絵本を読みながら、何度も色の名前の練習をしていたことを思い返し、その成果に陸と目を合わせて微笑んだ。
あと一つ、出てこずに瞬は首をひねる。
「これは…ぴ?」
「ぴんくう!!」
ハッと目を輝かせる。
「せーかい!」
「やったあ~」
自分で手を叩いて喜び、陸はその頭を撫で、おじいちゃんもおばあちゃんもそんな様子に顔をほころばせていた。
その傍らで優月は静かに目をつむり、手を合わせ、『桐谷みなみ』へと、心の中で言葉を贈った。