白い月~夜明け前のその空に~
そして後日、電車を乗り継ぎ佐野家の墓参りへ。
自分の両親の墓参りへは、彼女は少しばかり躊躇していた。
一人ではない、そのことが何よりの彼女の心の支えでもあったけれど。
お墓があるその場所は、陸と再会した寺院。
あの桜の木も、まだ開花はしていないが、蕾が沢山ふくらんでいた。
一年前を思い出しながら、桜の下を彼女は通っていく。
(……もう、一年経ったのか。信じられないな)
錯覚を起こすように、それはほんの少し前のことのように感じるのだった。
前を進んでいた陸は後ろを振り返り、静かに歩く彼女を待つ。
追いつくと、陸は優月の背中にそっと触れ支えながら、一緒に歩いた。
彼等の目の前には、おじいちゃんおばあちゃん、二人の間で手を繋いで歩く瞬がいた。
そんな光景が日差しの中でより眩しく見え、優月の胸の奥を震えるようにしめつけた。
歩みを合わせる彼、そして背中の手の温もりが、ここに言葉がなくとも確かな優しさが彼女に伝う。