白い月~夜明け前のその空に~
「ゆぢゅ?だいじょうぶ?」
「……大丈夫だよ。瞬ちゃんのご挨拶がね、嬉しくて。ちょっと、嬉し泣き……」
「う…れちなき?…いたいいたいじゃないんだね。ゆぢゅよかったあ」
瞬は彼女を見上げにっこり笑った。
彼女が編み上げたばかりの帽子を早速かぶってきた彼を、優月は帽子の上からそっと撫でる。
自分の両親が眠る墓。
ここで彼女は、今目の前に広がる確かな温もりを、心いっぱい染み込ませた。
そして涙をぬぐい、瞬や陸、おばあちゃん達に笑顔を向けたのだった。
(……これから、みんなと、生きていきます…。どんな事があっても、きっと、みんなの笑顔を守り、生きていきます)
再び手を合わせると、そう心の中で、『桐谷みなみ』へ向けた時と同じ言葉を、迷いなく刻んだ。
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「お疲れ様でした!」
陸のバイト先であった洋食屋で、ブラウスと紺のスカート、サロンエプロンを身につけた優月が明るい声で言う。