白い月~夜明け前のその空に~
帰り道、先ほどの光景を思い出しながら優月は自転車を走らせた。
あれから、壁ドン攻撃と共に説教された河野だったが、その場は上手く収まった。
危ぶまれたお手製デザートも続行に。
(一見落着って感じかな。とりあえず。……でも結構楽しそうだな。本当どんなデザートなんだろう)
洋食屋のバイトを高校卒業と共に退職した陸。
初めて一家として店を訪れた際、店長から直々に優月はアルバイトに誘われた。
バイト先を探していたこともあり、すぐに承諾し4月から働くことに。
家庭に支障のない範囲内で。
陸が正社員として働き、少し生活にゆとりがもてるようになるとしても、自分も家族の一員として協力したい、それが彼女が部活を辞めて、バイトを決めたきっかけだった。
何でも器用にこなし信頼のあった彼の後に入るのは、気が引けてしまう面もありつつ、彼女には新たな責任感が生まれていた。