白い月~夜明け前のその空に~
卓袱台に並べられた夕食。
ほかほか湯気がたち、出来立ての香りをほのかに漂わせる。
今晩のメニューは相園家ど定番の、親子丼。
素朴でありながら、お腹いっぱになって、そして心まで満たされて、温かくなる。
不思議でちょっと懐かしい。
そんな相園家の親子丼。
家族みんな大好きなご飯。
決して大きくない茶の間に、今日も笑顔と共に他愛無い会話が広がる。
「そうだ、陸。この前話してた、影絵の劇。明日だったみたい」
「お、そっか。よし!瞬、観に行こう!影絵」
「かげぇ?」
「そう。いつも読んでるだろ、絵本。それが、目の前で絵が動いていく感じかな。ドキドキわくわくだよ」
「しゅごーいね、わっかんないけどね」
陸が誘うがそれよりも瞬はご飯を頬張る。
「わっかんないよね、あはは。ま、楽しみにしてて」
「うん。ゆぢゅもいくの?」
「行くよ」
「しゅんもいくーう」
「みんなで行こうね」
陸と優月はそっと目を合わせ、一緒に微笑んだ。