白い月~夜明け前のその空に~
【…陸が好き。でもそれだけでいい。一緒にいられるだけで毎日幸せだから】
幼いながらも、確かに兄として慕う好きとは違うと分かっていた。
それと、お伽噺の姫と王子のような関係にはなれないこと。
そのうちこの気持ちも、忘れるものだということも。
けれど、間違っていた。
10年過ぎても忘れていなかったのだから。
彼女の心の奥で光が灯るなら、きっとそれは、淡い桜の花の色をしているだろう。
まるで、再会した時に側にあった大きな桜のような。
ひっそりと揺れながら…。