白い月~夜明け前のその空に~
陸は他のクラスメイトと同じに彼女と業務的に話すことはあっても、それ以上の会話はしたことがなかった。
荒波立つことが永遠にないように思えた、良く言えば平凡で悪く言えば退屈な学校生活。
それはもちろん彼が望んでしてきたことだ。
誰も私生活では【父親】の顔があるなんて知らない。
今ある学校生活は全て彼が作り上げたもの。
残り僅かな高校生活、最後までその世界を作り上げていくつもりでいた。
けれど、そうも言っていられない、ざらつく風を陸は感じ取っていた。
暑い日差しの中で見えた、残像…。
手を伸ばせばすぐ届きそうな腕…。
はっきりとは蘇らないその面影…。