白い月~夜明け前のその空に~
―――放課後
昇降口を出て、校門とは反対方向へ行く陸。
昼休み以外は滅多に行かない中庭のベンチに、陸は足を向かわせていた。
何となくだが外に出た時、初めて小柳とベンチで会った時に吹いた風と同じ風が吹いた気がして。
胸をざらつかせた、あの風。
気のせいだったら別にそれでいい。
でも心の片隅では、もしかしたら…と、思いもする。
今日の陸はやたらと神経が過敏になっていた。
自分でも調子が狂うのを感じつつ、早足で向かう。
中庭に着くと、見覚えのある後ろ姿が視界に入る。
彼の予感は的中。
横でまとめた髪の毛が風になびく。
どこを見つめているのか、ベンチにただじっと座っている。