結びの魔法
「じゃあね~。」

そういって洋子は行ってしまった。

「・・・僕らも席に着こ・・・、まだやっていたのか。」

秀と陽はまださっきのいがみ合いを続けていた。

「もうおしまい!!席に着かなきゃ!」

僕は無理やりうなりあっている二人を引き剥がし、秀を席に着かせた。周りの子は洋子

と話し込んでいるうちにさっさと席に着いたらしく、最後に席に着いたには僕らだっ

た。そして僕らが座ったと同時に先生が入ってきた。先生は綺麗な黒いスーツを着てい

て黒いふちの付いたガラスを目にかけていて、髪は少し茶色かった。そして高梨さんよ

りも少し若い感じだ。

「皆に今日は新しい仲間を紹介しよう。難民キャンプという大変な立場から上京してき

た、結城兄弟だ。こっちに来い、結城ズ。」

見かけによらずボーイソプラノな声で先生は僕らに手招きをした。けれど僕らには不思

議でしかたの無いことが一つある。それは『ユイシロズ』と言ったことだ。

「先生。僕らの名前は結城です。ユイジョウズじゃないですよ。」

僕はまじめに言ったのだが、周りの生徒がドッと笑い出した。

「な、なんですか?」

先生もくすくす笑っている。僕らは恥ずかしいやら腹立たしいやらでパニックになりか

けた。

「いや、ごめんごめん。ズというのは『達』と同じ意味をしている言葉だよ。知らなく

ても無理ないね。さぁ、こっちにおいで。」

先生はまだおかしそうに笑いをこらえている。

「えーと。君が陽くんだね?で、君はぁ・・・。」

「秀です。こっちが要です。」

「こんにちわ。お世話になります。」

教わったとおり、すすんで挨拶をした。

「うん。合格だね。礼儀はばっちり。結構結構!」

軽快に笑って先生は言った。

「君達はこれから、もっと本格的な勉強をしてもらう。クラスはここにいる全員で一ク

ラスしかない。皆も仲良くするんだぞ!。」

「はーい。」

生徒一同、先生に元気良く答える。

「よし。じゃあ席に戻っていいよ。」

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