結びの魔法
さっきの席に戻り座った。

「では、授業を始めよう。今日は皆の自己紹介だ・・・。」

こうして初めての授業が行われた。

「つかれたぁ・・・。」

部屋に帰るなり秀がたたみになだれ込む。長旅を終えていきなり勉強は正直きつかっ

た。乗りなれないものに長時間乗せられたのが主な原因だ。

「日本を甘く見ていた。うかつだったな。」

「そうだね。今日は早く寝よう。」

僕らはそこで、この後もう一つ行かなければならない場所があったことを思い出した。

「しかたないか・・・。皆行こう。そしてさっさと終わらせてこよう。」

「・・・そういえばお腹すいたね。」

陽が何気なく言った。そういえばそうだ、朝から何も食べていない。でもそんなに驚く

ことも無かった。僕らにはそれが当たり前だったのだ。

「いつものこと。ほら、いくぞ。」

今度は僕が一番最初に部屋を出た。寝転がっていた秀とげんなり顔の陽はしぶしぶ部屋

を後にした。

一階の右側階段には青い布がたれていた。よく分からないがそこにひらがなで『ゆ』と

書いてある。

「ゆ?」

「『ゆ』だな。なんだこれ?」

「入れば分かるよ、きっと。」

僕らは疑問に思いながらも中に入っていった。入ってすぐにお湯の匂いがすることに気

がついた。

「これってお湯の匂いだね。だから『ゆ』かな?」

「お湯ってことはここは風呂か。」

目の前で男子生徒が服を脱いでいた。そしてかごにたたんで入れて風呂に向かう。

「すごいな日本。温泉大国日本。お湯の無駄使いだな。どうりで俺らに水が回ってこな

いわけだ。」

秀はそういいつつも服を脱いでいる。僕も服を脱ぎ出す。

「・・・。」

陽は僕が脱ぐのをじっと見ている。なんか・・・いやな視線だ。陽は少し顔が赤いし、息が

荒いような気もするし・・・。風邪かな?

「陽?脱がないの?」

声をかけると、我にかえったようだった。

「うん!今脱ぐっ。それでね兄ィ・・・、前から夢だったんだけどね・・・。」

陽はもじもじと恥ずかしがっている。やはり顔が赤い。

「ん?言ってみろよ。」

秀は先に行ってしまった。
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