結びの魔法
「ん?何見てんのかなぼうや?この可哀想なお兄ちゃんのカモになってくれるのか?そ

れはありがとう。じゃあ憂さ晴らしに何発か殴らせていただきますねぇ・・・。」

カツアゲ男は狂った様ににたぁっと笑った。それが本性だろう。だけどそんなもの怖い

とは思わなかった。むしろ哀れむべきかもしれない。一方男の人はこれ見よがしにさっ

さと逃げてしまった。

「まずはこのいかにも頭のよさそうなぼっちゃんからっ!」

カツアゲ男は腕を思い切り助走をつけて秀の顔の真横に当てた。ミシリとコンクリート

がくじれる音がする。でも僕らは微動だにしない。

「なんだぁ?面白くねぇ・・・。泣けよ、叫べよ!ままでも何でも呼べばぁ?」

それは陽に向けられて言った言葉だった。子ども扱いされるのが人一倍嫌いな陽には挑

発以外の何者でもなかった。

「・・・マジつまんね。じゃあそろそろお楽しみの時間だな・・・!」

また腕を振り上げて今度は僕の顔面を狙った。僕は下にすっと避け、相手の鳩尾に渾身

の一発を打ち込んだ。カツアゲ男はガハッと小さくうめいて倒れてしまった。僕らは向

こうで実際戦うために使う体術を習わされた。殴られるのにも慣れている。だからこそ

見切ることもできるのだ。

「てめぇ・・・、うぐぅ・・・。・・・!?」

カツアゲ男は俺らを見上げて固まった。たぶん今の僕らの目は本物の殺気を放っている

だろう。平和ボケした世の中で育った人なら本能的に殺されると悟ることになるだろ

う。このカツアゲ男のように・・・。

「死にたいんですか・・・?」

これは完全に僕ではなく陰だった。


「くそ・・・。う・・ごけねぇ・・・。・・・けっ、ガキに殺されてたまっか・・・よぉ・・・。」

あら呼吸の合間に毒突く元気がまだあった。なかなかしぶといな・・・。

「そうか。じゃあいっぺん死んでみるといいです。」

僕はカツアゲ男の胸ぐらを掴み床に強打した。

「ぐぁっはぁ・・・。」

その呻きっきりもう何も言わなくなった。殺しはしない、ただ眠ってもらうだけ・・・。

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