結びの魔法
「要。警察だ。行こう。」

僕は秀の声にハッとした。我に帰るとぐったり横たわるカツアゲ男。僕は怒ると、暴走

する癖がある。陰のとも言うべきか・・・。

「さようなら、カツアゲ君。本当の強さとはなにか、学んどけよ!」

僕は冗談のつもりでかっこいい台詞を言った。二人は呆れているみたいだ。恥ずかしく

なった僕は照れなおしにさっさと八百屋に向かった。




僕らが去った直後にカツアゲ男は起き上がった。痛手だったものの意識はあった。ぼや

ける視界で何とか立ち上がると、去っていく三人の後ろ姿が見える。

「かな・・・め・・・。」

ボソッとつぶやいて口の中の血をペッと吐いた。そしてよろよろと去っていった・・・。





その頃、僕らは八百屋についていて必要な材料を選んでいた。今日は簡単に『野菜のご

った煮汁』を作ることにした。ご飯は部屋に電子ジャーがあるのでそれを使うから、お

米を買えばいいだけだ。八百屋では、にんじんと大根、ジャガイモとこんなものだろ

う。

「君達お使いかな?感心だねぇ。最近の若者は手伝いをしなくなってな、うちの娘も息

子もそうさ。」

野菜を袋につめながら八百屋のおじさんが世間話を始める。僕らはためらい無く話し

た。

「・・・お使い・・・ですかね。」

僕らは曖昧に答えた。買ってきてと頼まれたわけでもないからお使いというのか言わな

いのか・・・。

「そうだ、さっきそこの路地のところでカツアゲをしていた男がぼこぼこにされたんだ

とよ!君らも気をつけなよ?」

いかつい感じの顔をしているが、気のいい人みたいだ。

「はい。ご忠告どうもです。」

買ったものを受けとって僕らは八百屋を後にした。そして次は近くのコンビニへ味噌を

買いに行く。僕らは地図を見てコンビニへと足を運ぶ。しかし僕はすっと足を止める。

何か思ったわけではなく、ただ視界の端に何かがうつったからだ。
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