結びの魔法
「・・・こんな商店街の真ん中に森が・・・。」

そこには商店街とは浮いた、うっそうと茂る森があった。黄色いロープが張ってあると

ころを見ると、そこは立ち入り禁止なのだろう。しかしそういうところは僕らの好奇心

をかきたてる物がある。小さい頃は平和の勇者にあこがれたものだ。僕が勇者で秀は魔

法使い、陽は拳銃や弓などの飛び道具係。そんな役割で遊んでいたこともあった。

「・・・なぁ、ちょっと入ってみないか?」

僕はいたずらっぽく笑っていった。二人はためらうことなくそれに賛成しまわりに人が

いないうちに森の中に巧みに侵入した。

森の中は外見と変わらずうっそうと茂っており、もちろん人の気配は無い。それが僕ら

にはなんだか懐かしく感じた。森なんて無かったが、人気が無くてしんとしていた。

「肌寒いな。兄ィ、大丈夫?」

陽が僕の顔を除きこむ。本当に心配しているのではなく、茶化しているだけだ。

「平気だよ。馬鹿にすんな。」

僕らはいつもの調子に戻っていた。向こうにいるときはこういった汚い言葉は日常茶飯

事だった。しかし、日本に来るにあたって僕らは『良い子』を演じなければならなかっ

たため、久しぶりにこの話し方をした。恐れなどは無い。ただとめどなく湧き上がる開

放感と好奇心がたまらなく楽しい。

「もっとおくにいこうぜ!!」

秀までがこんな言葉を使ってせかす。僕らは競っていける所までかけた。そしてある開

けた場所にたどり着く。そこには小さな御社様がぽつんと立っていた。

「なんだこれ?小さな家だな。」

僕らは御社様なんて見たことが無いからこれが何か分からなかった。

「ん・・・?なんかここ地面硬くないか?」

陽が数回足踏みをする。僕らもそれにならって数回足踏みをしてみた。確かにここの地

面は異様に硬かった。
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