結びの魔法
結局昨日は、本当に野菜炒めだけで食べるはめになってしまった。

「今日はしっかり買い物しような。」

先生も苦笑いしている。僕らは今放課後の教室にいる。

「昔から要は貧乏くじ体質なんですよ。」

と陽に茶化された。確かに僕は厄男で貧乏くじ体質なのだ。

「貧乏くじって言うけど、ほんとに何をしてたんだい?」

先生が言った何気ないその一言に僕らは固まった。

「ち、ちょっと道草を。な?」

「う、うん。」

「?まあ、新しい町で好奇心がうずくのは分かるよ。・・・あ、そうだ。」

先生は何かをひらめいてポケットから何かを取り出した。そして次に首にかけていたペ

ンダントをはずした。

「これを君達にあげる。安物だけどお守りさ、貧乏くじ君。」

そう言って僕らに一つずつ渡してくれた。秀と陽はブレスレットで僕はペンダントを渡

された。ブレスレットのサイズはぴったりですごく綺麗な薄紫の丸い石がついていた。

シンプルなデザインで、動くとシャランッと涼しげな音がする。

「・・・・すごく良く似合ってるよ。・・・・・・。」

そういうと黙ってしまった。まじまじと僕らを見ているその目は、あのめがねケースを

眺めていたときと同じ目だった。

「あの、なんだか悪いですよ。俺はめがねをもらったし・・・。」

秀が手首からブレスレットをはずそうとした。すると先生は、それを止めた。

「せっかくだからしばらくつけておきなさい。遠慮はいらないよ。」

秀はその言葉に促されてはずすのをやめた。実は結構気に入っているのだ。

「おっと。そろそろ会議の時間だ。」

先生は何気なく時計を見るとそう言って行ってしまった。

「先生なんだかよそよそしくなかった?」

陽が不思議そうに聞く。僕も秀も同じものを感じていた。

「そうだね、よそよそしいと言うより、何か隠している感じだね・・・。」

僕らは先生が見えなくなるまで、その背中を見つめ続けていた。

「そろそろ帰ろうか。」

秀が声をかけてぞろぞろと部屋に戻った。この頃はもうこの暮らしにもなれてきて、

水を心置きなく使うということができるようになった。といっても貧乏性はまだまだ。

< 22 / 39 >

この作品をシェア

pagetop