結びの魔法
「大人だからといっても実際できることは限られているんだよ。」

小さくそうつぶやいて、先生も部屋に帰っていった。

野次馬もほとんど部屋に帰っていく。僕らもかえって寝る準備に取り掛かるものの、な

かなか寝付けなかった。



次の日目が覚めると僕の顔を誰かがのぞいていた。視界がはっきりしなくて初めはそれ

が誰だかわからなかったがだんだんはっきりと見えてきた。そしてその人を確認したと

同時にバッと起き上がった。

「よ、洋子さん!?」

そこには驚いた顔の洋子さんがいた。

「えと、おはよ。」

洋子さんはおずおずと挨拶をした。なんだか打って変わって性格が別人のようだ。

「ん~・・・。おはよぉ、・・・あれ?兄ィ、誰?」

話し声に起こされた陽が寝ぼけつつ聞く。秀も起き上がる。

「洋子さんだよ。」

「「洋子さん!?」」

二人も同じ反応ではっきりと目を覚ます。

「洋子さん、こんな朝早く何の用?」

秀が聞いた。洋子さんはなぜか少し赤くなり、目線をさまよわせる。

「・・・誤りにきたのよ。き、昨日は迷惑かけて・・・その、悪かったわね。」

そう言ってペコリと頭を下げた。

「・・・そんなこと気にしなくていいんだよ。」

「そうそう。あたりまえのことをしたまでだよ。」

「ということだ。気にしなくていいと。」

口々に洋子さんをなぐさめる。けれど洋子さんはそんな言葉は耳に入っていなかった。

三人の顔を交互に見つめて何かを考えていた。

「どうかしたの?」

声をかけるとさっきより赤くなって、何かをつぶやいた。その声はとても小さくて聞き

取れなかった。

「え、何?聞こえないよ。」

「き、昨日・・・、誰が、あの・・・だ、だ・・・・。」
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