結びの魔法
「さっきはペンダントをはめてきたからまたペンダントをはめればいいんじゃない

か?」

「そ、そうだな。」

僕はペンダントとブレスレットをはめ直してみた。そして真ん中の凹凸が開いたはいい

が、

「あーーっ!水晶玉みたいなのが粉々だぁ!!」

そう。さっきあった水晶玉もどきは粉々に砕け散ってきた。

「・・・そういえばさっき・・・パリーンって・・・。」

僕らはまたもや愕然となった。というよりも、途方にくれた。知らない国でいきなり迷

子・・・。

「そう、町に行って交番に行こう。おまわりさんなら何とかしてくれるはずだよ。」

「なんか外国風な町並みだね。・・・明らかに日本じゃないような・・・。」

確かに、町並みは完全に日本ではなかった。レンガ造りの家とそこに張り付くつた。と

ころどころに広々とした農場と畑が広がっている。

「行って見ないことにはどうにもならないよ。とにかく行ってみよ?」

僕は二人を引っ張って町の方向に歩いていった。早く帰らないと先生に心配がかかる

し、せっかく買い物もしてきたのに材料が傷んでしまう。

「・・・先生今頃心配してるかなぁ・・・。」

陽がぼそりと小さくつぶやいた。それに対して『僕』は冷たく言った。

「・・・それ以上弱音を吐いたら置いて行くぞ。」

「ひぅっ・・・。」

やってしまった・・・。いままで陰が口を出さないように気をつけていたのに、ついにやっ

てしまった・・・。秀は陰のことには気がついていて、たまに出てきても驚きはしない。し

かし陽は昔からの味方である僕を本物の兄のように思ってくれている。心のよりどころ

として憧れを抱いている。そんな陽を僕も本物の弟のように思っていて、大切だと思っ

ている。だからこそ僕の黒い部分は隠しておきたかったのに・・・。今ではおびえた様子で

僕を見ている。

「あ、いや。なんでもない。ごめんな。」

「え、う、うん・・・。」

陽はぎこちなく笑う。そして無言で先を歩いていってしまった。その手にはグッと力が

入り、震えていた。しばらく僕らは無言のままに歩き続けた。しかし、話すきっかけは

すぐに訪れた。目的地の町の入り口にやってきたのだった。

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