結びの魔法
確かにウサギの丸焼きのような形をしていた。もっとも、僕らにはどんなものもご馳走

にしか見えないが。

「いただきマース!」

一番最初に食べ始めたのは陽だった。それがあんまりにもおいしそうに食べるものだか

ら僕らもたまらず食べる。こんがりと良く焼けていて、少し甘辛い味付けになってい

る。外は固めだが中の肉はぷるんとした触感でするすると食べられてしまう。

「とってもおいしいれふこれ。」

僕は口いっぱいに方張りながら感想を述べる。

「それはよかった。体の弱った人にはこれが一番さ。下で待っているから、ゆっくり食

べておいで。」

そう言ってグシさんは下に降りていってしまった。優しくてとても親切ないい人であ

る。

「なんだか分からないけど、こんなおいしいものが食べられてラッキーかもね。」

陽が満足げに言う。

「まだ分からない。判断するのはこれからだ。」

それに対して秀はまだ警戒心が残っていた。

「ちぇっ。頑固親父。」

ボソッと陽がつぶやいた言葉はしっかり秀の耳に届いていたらしい。秀は仕返しとばか

りに陽の最後の一切れをすばやく食べた。

「ああーーっ!!僕の~。」

陽は涙ぐんだ目で秀を見つめる。秀はこの攻撃にめっぽう弱い。

「分かったから泣くな!な?」

今回も負けてしまったようです。はい。

「あはははぁ。涙腺のコントルールくらいちょろいのさ。」

「・・・コントロール?」

「コントルール!」

陽はコントルールが合っていると信じきっていた。僕らはもういつもの調子に戻ってい

て、秀の頭痛も治ったようだ。

「・・・さてと。待っていることだし下に行って見ますか。」

「うん。いつまでも行方不明じゃあ先生が心配するもんね。早く帰る手段を考えなき

ゃ。」
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