結びの魔法
「兄ィ、どうしたの?」

「ん、なんでもない。」

「あ、ナンパさんが戻ってくるよ?」

僕らの視線の先にはうなだれかけた高梨さんの頼りない姿が移る。

「「「・・・。」」」

無言で視線を送る。

「な、なんだ?変な遊びはよせ。これからお前らの部屋に案内するから着いて来い。」

「「「部屋!?」」」

三人は同時に飛び上がった。今まで部屋なんて高価な物を持っていなかったから嬉しく

て舞い上がってしまう。

「さっさと行くぞ。」

「はーい!!」

陽が一番うきうきして先頭でついていった。階段を上り右に曲がるとそこにはシンプル

な茶色いドアがあった。

「ここがお前らの部屋だ。仲良くするんだぞ?・・・聞いてるのか?」

僕らに耳にはもう何も入ってこなかった。ただ喜びだけが溢れていた。部屋は1LDKとと

ても狭いが、3人にはそれでも高価すぎるようなものに見えた。小さいながら窓がつい

て、押入れ、たんす、キッチン、トイレ、そして部屋の真ん中にちょこんとちゃぶ台が

置いてある。

「ここが僕らのへやかぁ!」

陽は感激のあまりに感嘆する。

「難民テントとは大違いだ・・・。」

「ああ。」

難民用のテントはそれはそれはひどいものだったトイレは道端で、風呂は川。ネタネタ

の泥地に棒を差して布を引っ掛けて出来上がり。雨が降れば家の中でもびしょびしょ。

足元は余計にぬかるみテントは倒れる。そんな感じだった。

「時計の読み方は教わっているな?4時になったら右の廊下をまっすぐ行った所の突き当

たりにある部屋に集まれ。それが終わったらすぐに一階の階段の右の廊下前に集合。い

いな?」

「はい!」

高梨さんが出て行ってしまった後は三人で小さな部屋内をまじまじと調査して回った。

「うあぁ・・・。引き出しの中にふかふかの敷布団が・・・。ありえない・・・すごいふわふ

わ!」

僕は押入れ担当で、早速調査したところそこからは布団が出てきた。裂いたズタ袋のよ

うな布にはさまれて寝ていた僕らにはこんなものは初めてだ。

「うわぁ。やわらかい・・・。」

「ああ、綿なんて高級品をこんなに惜しげもなく・・・。」

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