結びの魔法
「『かいぎしつ』って読むんだよ。」

一生懸命読み方を考えている姿がなんだか微笑ましくてついつい助けてしまう。

「わ、分かってた!先言わないでよ。・・・う~。」

むくれてすねてしまう。子ども扱いしたつもりは無かったのだが。

「ごめん。よしよしそんなにしょぼくれるなよ。」

「うぅ・・・。」

僕は陽の猫毛な髪をなでた。怒るかと思ったが案外嬉しそうな顔をしている。

「バカやってないで行くぞ。」

このままいくとループすることを見かねて秀が終止符を打ってくれた。中は以外に人が

いた。もともとここにいる生徒だろう。

「ここってこんなに人いたんだ。静だったからそんな感じはぜんぜんしなかった。」

「それにしても・・・皆色が白いね・・・。」

「うん・・・。」

僕らは直射日光の下で生活を送っていたせいで上から下まで薄黒い。

「・・・なんか劣等感・・・。」

陽が悔しそうにつぶやいた。せっかくあそこから逃げてきたのに、ここに来てもこんな

劣等感を味わうなんて・・・。

「気にするな。」

瞳のにごってきた僕らの目を秀が覚まさせてくれた。

「・・・さんきゅ。」

陽が小さくお礼をいった。

「さてと、空いている席にでもすわっ!?」

「きゃっ!」

秀は『すわ』の部分で誰かとぶつかった。悲鳴からすると女の子だろう。下を見るとそ

こには小柄な女の子がしりもちをついていた。秀が目が悪いことを忘れていた。たぶん

彼女が見えなかったのだろう。

「あ・・・ごめん。大丈夫?怪我は無い?」

僕は手を差し伸べる。

「しっかり前見て歩きなさいよ!」

小柄な外見の割りに大きな態度で食いついてきた。

「ごめん。こいつ目が悪いんだ・・・よっと。」

腕に力をこめて彼女を立たせる。

「え・・・。たしかに・・・その・・・悪かったわ。ありがとう。」
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