あなたの手に包まれて
結局終始柔らかく温かい表情の社長に見つめられたまま、なごやかに会話を挟みつつ、至極穏やかに、社長とのランチは終了した。
随分とのんびり過ごしたように思ったけれど、車に戻るとまだ12:30にもなっていなかった。
ちょっと寄っても良い?と言い、会社からさほど遠くない高層複合ビルの地下駐車場に入った社長。
ちょっと用があって…と一人だけ降りようとしたので、私も午後の来客用にお茶菓子を買いたい旨伝え、さっきと同様、社長に手を取られ車を降りた。
30分ほどで戻ると言い、颯爽と駐車場を後にする社長の背中を見送り、私も併設されているホテル内のパティスリーを目指す。
…やっぱり会長のお電話からどこかおかしい。
どこがどうおかしいのか説明はできないけれど、なんとなく…社長の纏うオーラが陰ったような気がする。
なんだろう…