佐々倉のカノジョ。
財布をソファに放り投げて、玄関に向かう。
その途中で璃乃が走ってきて、
「でもたぶん、この家の裏の公園にいるから大丈夫…」
「聞きたいことあるからいいんだよ」
今日は、忙しい。
かつて俺がこんなに能動的になったことがあっただろうか。
「…」
璃乃の言う通り、裏の公園にソイツはいた。
ジャングルジム…、だっけか、それに器用に寝転がっていた。
「おい」
びくっと腕が動き、こちらに視線を向ける。
「なんだよ、来んな」
面倒なのは嫌いだ。
俺は単刀直入に言った。
「お前、璃乃のこと好きなの?」
「ばっ、かじゃねぇの…」
……まじかよ。
絶対好きじゃんその顔。
「お前…、姉弟だぞ……?」
「父親ちげーし」
なにその発言。
好きなの認めたも同然じゃね?
どうやら大空もそれに気づいたらしく、起き上がると頭をガシガシっとして、俺に言った。
「姉弟だからなんだよ。血は繋がってねぇ。それにもし好きじゃなくたって、お前みたいなやつには渡さねぇ」
「ようするに結局、姉貴が心配なんだよな?」
少し笑いながら言うと、大空はジャングルジムから飛び降りて真っ赤な顔で近づいてきた。
「うっせぇ!!お前には渡さねーからな!!」
ぐいっと襟を引かれ、至近距離でメンチ切られる。
「っつか、別に俺、アイツのことなんとも思ってねぇし、ははっ…」
大空がマジすぎて笑える……っ。
「なんだし、はぁ、もう疲れた」
大空は襟から手をはずすと、脱力したように言った。
「俺も笑いすぎて疲れた」
「ふざけんな、くそっ…」
最初はムカつくやつだと思ったけど、案外面白いやつじゃん。
だけどな、1個嘘ついた。
璃乃のこと、なんとも思ってないなんて、嘘だ。
「ほら、帰るぞ。璃乃の手料理が待ってるからな」
「あーっ、なんでお前なんかにバレちまったんだ、ったくー!」