佐々倉のカノジョ。
内緒の気持ち side:璃乃
上の空
「璃乃、一緒帰ろ~っ!」
「あ、彩佳。ちょっと待って」
もぉ~っ、なんで急いでるのに自転車の鍵ないのー!
「また自転車から抜いてないんじゃないの?」
「えー、そんなはずないと思うけどなぁ…」
今日は学校で課外授業があったから、夏休みだけど登校。
そんなわけで友達の彩佳と、これからお昼を食べに行く。
「んー、じゃぁ、とりあえずチャリ小屋いこ?」
「そうだね」
ショートカットが似合うこの子は、槇野彩佳。さっぱりした性格の、スポーツ大好き少女。
部活は、迷ったあげく、なんにも入ってないらしいけど。
「あ、あった!」
「ほら見ろー」
自転車の鍵抜くのまた忘れてた。
ほんとにドジで困る。
「ほら、早く行こーよ、あたしお腹すいちゃった」
「う、うん、ちょっと待って!」
カバンを篭にいれて、走り出す。
「ねね、それでさ、嵐くんのことなんだけど!」
「え、あっ、うん、なぁに?」
びっくりした。
急に嵐くんの名前出さないでよ。
「びっくりなことに、同じ学校の7組だったの!」
「え、そうなの!?」
「そ、そんな驚く?」
嵐くん、同じ学校だったんだ……!
全然気づかなかった。
「ほら、あたしらの学校人数多いじゃん?6~8組のひとは、2年生の階だし、気づかなかったよね~」
そう、私たちの通う高校は、人数が多く、
1~5組は1階だけど、6~8組は2階で、二年生と一緒。
私たちは3組で、嵐くんたちと会う機会があまりない。
「夏休み明けから、一緒に帰れるかなぁ」
「そうだといいね」
あぁ、ダメだ、笑顔がひきつってしまう。
私も嵐くんのこと好きになっちゃったなんて、絶対に言えないよ…。