佐々倉のカノジョ。
「どこいんだよ、分かりやすいところいろよな」
璃乃の家が駅に近かったのがまだいいけど。
なんかイラつくな。
なんだろう、この嫌な感じ。
「あ、嵐くーん!」
後ろから声がし、振り返るとそこには、彩佳と、一人の男。
近づいてくるその男の姿。
「……てめぇは……っ」
「ふはっ、嵐ってホントにあの嵐だったんだなー」
さっきからの嫌な感じは、コイツのせいだ。
全身が弥立つような感覚。
「なんでてめぇがここにいるんだ、渚」
「こいつのお兄ちゃんだからなぁ」
「ホントに知り合いだったんだ、お兄ちゃんたち!」
なに笑ってんのこの女。
吐き気がする。
「帰る」
俺は踵を返して、自宅に足を向ける。
「え!?ちょっと待って嵐くん!」
走りよって腕にしがみついてきた彩佳を思いきり振り払う。
「きゃ」
あぁイライラする。
吐き気がする。
胸糞悪い。
消えろ。
「逃げんのかよ、嵐」
コイツのこの声が、俺は大嫌いだ。