佐々倉のカノジョ。
そのときだった。
カシャッ、と音が聞こえたのは。
「は?」
携帯のカメラの音。
俺らの側でスマホを構えた彩佳が、俺が渚を殴った瞬間を撮ったらしかった。
同時に、左頬に痛みを感じる。
渚がやり返してきたらしい。
「……」
「アハハッ、最高だな彩佳、ちょっとそれ貸してみ」
俺の脳がすべてを理解し、行動を起こす前に事態は急激に変わっていく。
「あ、もしもし、ケーサツっすか?今、暴力振るわれて……はい、駅前の」
ニヤニヤと笑うそいつを前に、俺はもう一度殴りをいれた。
が、後ろに飛び退き、それを軽々とよけられてしまった。
「もーすぐお迎えが来るからな。それまで遊んでやるよ」
どうせこのまま捕まることになるとしたら。
コイツに復讐しないでどうする。
「……っう」
俺はそいつに向き直り、腹に蹴りを入れると、情けない声を出して倒れた。
襟を掴んで無理矢理起こし、殴りまくった。