キミトノナツ……

坂井さんは上履きで雌蝉を潰した。

懸命に生きて……なくなりそうな小さな命を坂井さんはなきものにした。

「分かったぁ?く・す・の・き」

ぐちゃぐちゃになった死骸を蹴り、そのまま教室を出ていく。

教室は再び静寂に包まれた。

楠木さんに対する感情が……

“かわいそう”

という感情が……

“もやもや”

という変な感情になった。

私はただただ動かなくなった塊を見てた。



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