恋をしようよ、愛し合おうぜ!
23
名残惜しく駅内のレストランを出た私たちは、手を繋いであてもなく駅内をブラブラ歩くと、午後4時台の新幹線の切符を、ついに買った。

「うわー。こだまか」
「何ですか、そのリアクションは。こだまに失礼でしょ」
「てことはよ、こだまの駅にしか停車しねえとこに住んでるんだな」
「あぁ、まぁ・・・はぃ。一応途中までのぞみで行って、乗り換えてもいいんですよ。そのほうが早いし。でも・・・早く行く必要ないから」
「帰りはのぞみ使えよ」
「そのつもり」と私は言いながら、片道のこだま乗車券をじっと見た。

「20分前だけど、行きます」
「そうだな。上で待つか」と言った野田さんは、ホームまで行ける入場券をすでに買っていた。

そしてホームで待つこと15分程で、私が乗るこだまが来た。
ここは始発なので、出発まで時間が少しだけある。
私はこだまに乗ることをグズグズとためらい・・・やっと中へ一歩入った。

また野田さんとの間に、距離ができてしまった。
私が自然と野田さんの方へ手を伸ばすと、野田さんはためらわず私の手を握ってくれた。

「あの・・・あのね、野田さん。私、いつ帰ってくるってハッキリ言えないから、だから、私のこと・・・」
「なつき」
「ん・・・」

ダメだ。
声出したら泣きそう・・・。

「あっちに行ってる間、俺に連絡する必要はねえが、俺の番号とアドレスは絶対消すなよ」
「ぅ・・・ん。けさな・・・ぃ」
「帰ってこい」

と言ってくれた野田さんが、私を抱きしめてくれた。
私の目から、こらえきれずに涙がどんどん流れ出てくる。

「のださ・・・ぁん。うぅっ」
「待ってるから」
「・・・・・・のださん」
「へそくりは返さなくていいぜ」と野田さんが明るく言うので、つい私は泣きながら微笑んだ。

そのとき、「間もなく出発いたします」というアナウンスが周囲に響いた。
私たちは体を離し・・・繋いだ手を少しずつ離していった。
そして「ドアが閉まります」という車掌の声が聞こえたのと同時に、私たちは手を離した。

「なっちゃん」
「しん・・・」と言ってる途中で、ドアが閉まってしまった。

私はドアに体を精一杯くっつけると、野田さんの唇の動きを見て、泣きながらコクコクうなずいた。

あぁついに・・・こだまが動き出した。

まだ追いかけてくる野田さんに、私は「好き」と口を大きく動かした。
それが野田さんに分かったのか。
最後に見えた野田さんは、何度かうなずいてくれた。

野田さん。私もあなたのこと、好き。大好きだよ。


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