豆粒の悪戯
先生は教室右端の男子に向かって話していた。私じゃなかった…。よかった…。

「…え、と…忘れました。」

男子生徒は気まずそうに答えた。

「はぁ…忘れたならちゃんと言いなさい。」

先生は呆れた表情でまた動き出した。なんだ、あんまり怒らないのか。

「おいっ!お前もかっ!」

また心臓が引っ繰り返って正しい向きに…じゃなくて、

今度は本当に私に向かって言われていた。ええ、忘れました…。

「何でさっき言わなかった!」

え、そりゃー…無理ですよ…あの状況は…。

なんて言える筈も無く、黙りこくっていると先生はついに爆発した。

「いいか?人間誰だって忘れることはある。

でもそれを隠そうとするのは最低だ!わかったか桐島?」

…ハイハイ…ふぅ…。

なんで私のときだけマジギレ?

たまたま私のほうが後に見つかっただけなのに。

でも私が先に見つかってもきっとそこで爆発していたと思う。

なんていうか…、それが『要領悪い』ってことなのだと思うから…。

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