豆粒の悪戯
3.紘子さん
溜息交じりで家路につく。あ、今日は塾が無いぞ。やった。

「あらお帰り千沙ちゃん。」

疲れた私を百万円の値がつきそうな笑顔で迎えてくれるのはお母さん…

ということになっているけど血は繋がっていない紘子さん。

これには事情があって本当のお母さんは私が小一のころに他界。

その後小五の時父は紘子さんをものにした。(言い方悪い?)

紘子さんは母に似て優しい人だった。

私もすぐに紘子さんのことが好きになった。

でも、なんだか図々しい気がしてお母さんと呼んだことは一度もない。

そのことについて彼女がどう思っているのかなんて聞いたこともないし、

想像もつかない。そして中二のとき父が他界した。

もはや私と紘子さんは完全なる『他人』だった。

優しい紘子さんはそのまま私と暮らすことを選んだ。

当たり前のように。

でも、私の出来が悪ければ、

紘子さんをがっかりさせるようなことがあれば彼女は心の中できっと呟くだろう。

「なんでこんな子と暮らしているのだろう。」
彼女に嫌われたくない一心で塾に通いだしたりして、

少しでも頭が良くなるよう努力した。


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