好きになんてなりたくなかった
「え?大丈夫なの?今日会うんでしょ?」

「うん。あっちはわたしの顔…って言っちゃあなんだけど、よく知ってるんだって」

「え、なんで?初対面じゃないの?」

同じクラスで友達の柊 菜奈(ヒイラギ ナナ)は興味津々という感じで聞いてくる。

今は放課後で誰もいないこの教室。

そんな教室にはわたしと菜奈の声しか聞こえない。

学校で菜奈と話せなくなると思うとしんみり悲しくなる。

わたしはついため息をついてしまう。

飲みかけのパックのジュースを飲んでも中身は空。

また、ため息。

ため息をつくと幸せが逃げるってよく言いますけどね、本当に。

「それにはわたしも分かんない。それに、家の両親わたしの相手となる方の名前を教えてくれないんだよね。普通は教えるのに…」

「えー、それって…もしかしてあれじゃない?」

「あれって?」

「ほらっ、結花ん家って貧乏じゃん」

「言い方ひどいけど」


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