大嫌い…だけど、好き。
「はぁ…いいなぁ…」
マンガを読みながら呟く。
私が読んでいるマンガは、ちょっと強引な彼と弱気な女の子のお話。
キスシーンを見ていて、思った。
―――羨ましい。
「アタシもこんな恋したいぃーっ!!」
私、朝比奈さゆりには恋愛経験が全くない。
まず、人を好きになったことがない。
人を好きになるって、どんな気持ちなんだろう…?
「何々?ついに、サユも恋に目覚めた?」
キラキラ目を輝かせながら聞いてくるのは、私の親友である鈴原佳奈。
ちなみに私は友達に、"さゆり"ではなく"サユ"と呼ばれている。
「まあね。いいよね、佳奈は。彼氏いるし!」
「まあねー。サユも早く誰か見つけなよ!…あ、もう見つけてるか…」
「はぁ?見つけてる…?誰のこと言ってんのよ」
「それはもちろん…」
何か企んでいそうな笑みを見せる佳奈。
悪い予感しかしない。