幻想月夜
 この世界をおおい隠していた雪は解け、冬の間休んでいた店もまた始まり――



 少女は木苺の木があるカフェのテラスで紅茶をひとつ頼み、青年の絵本を読んでいました。



 希望の花を求め、少女が探す物語です。



 その時――やわらかな風が散らしたサクラの花びらが、紅茶の中へ落ちました。



 少女が花びらを取ろうとしたその時です。



「ユシア、ただいま」

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