不機嫌なアルバトロス

「まさかご両親が離婚されて、それぞれ離れ離れだったなんて知らなかったです。やっとの再会でしたのに、色々噂が立って大変でしたね」



そう。


そーいうことになってるのか。



確かにそれなら別姓だしね。


先手を打たれたらしい。



私は心の中で、佐藤一哉という男の詐欺師の根回しに脱帽する。




「私が噂を収束させますから、安心してください」




受付嬢が胸を張って、明らかに恋をしている女子そのものな顔をして言うもんだから、私は彼の前で間違ってもこんな風にはならないように気をつけようと誓った。





「…ところで、お兄様って独身?」




「!?…さ、さぁ?私にはわからないです、すみません、お役に立てずに。では急ぎますので!」



とうとう一番訊きたかったであろう本題に入った受付嬢をなんとか制し、慌てて私はエレベーターの箱に入った。
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