不機嫌なアルバトロス
中堀空生という男
携帯の振動が、、さっきから、響いている。
もう起きなきゃいけないけど…
あとちょっと、、あと5分だけ…
布団を頭からすっぽり被って、貴重な時間をまどろむ。
今日は、水曜日。
週の半ばだ。
折り返し地点だ。
もう少しで、土日になる。
頑張れ、花音。
自分を励まして、そろっと布団から手を出して、携帯に伸ばす。
アラームを止めると、携帯の画面が昨夜のままになっている。
家に帰ってから、志織さんが会社まで来たことを、中堀さんに伝えるか伝えないか悩んだ末、中堀さんの電話番号を表示したまま、私は眠りに落ちたらしい。
メールだったら言えたかなと思うが、残念なことに私の携帯には彼のアドレスが入っていない。
でもきっと多分、伝えたほうが良いとは思う。
一人悶々としながら、私はベットから降りて洗面所に向かった。
「うー、冷たーい」
フローリングの床が裸足を冷やす。
慌ててベット脇に脱ぎ捨ててあるスリッパを履きに戻って、また洗面所に向かった。
「どうしよっかなぁ…」
鏡に映る自分を見ながら、小さく呟く。
問題はどうやって中堀さんに伝えるかだ。
そのために電話を掛けようと考えたのだが、結局出来なかった。
もしかしたら何かの用事で向こうから掛かってくるかもと思ったのだが、こういう時に限って鳴らなかった。