不機嫌なアルバトロス
唇を放し、放心状態の私の視線をタカが追う。
「?あれ、もしかしてわかっちゃった?」
舌をべっと出して笑った。
「タカ…おまえなぁ…」
トーマが何やらタカのことを説教してくれてるのが遠くで聞こえる。
―み、見られた。
少しの時間目が合って、直ぐに逸らされたあの人。
沢山の機械に囲まれているひと。
金髪の、彼。
中堀 空生。
会いたかった、人。
好き、かもしれない、人。
なのに、他の人とキスしてるとこ、見られた。
―最悪だ。
唇をぐいっと拭くと、解けたリボンが床にはらりと落ちた。
「カノンちゃん?」
おぼつかない足取りで会場に背を向けると、タカが追ってくる。
「ごめんっっ、ちょっと悪ノリした、かも…」
振り返らずに出口に向かうが、なおもタカは後を付いて来る。
「気悪くさせたなら謝るからちょっと待ってよ…」
無視し続けていると、ついにタカが私の手を捕まえた。
仕方なく私は立ち止まる。
でも。
「よかっ「…っざけんじゃないわよ!!!!」ぶっ!」
振り返りざまに、持っていたバッグを思いっきりタカの顔面にヒットさせた。
「気安く触るなばーか!」