不機嫌なアルバトロス
トーマさんも、私と同じようなお一人様席で、コーヒーを飲んでいた。


手には読みかけの文庫本がある。




「お昼ごはん?ですか?」




手付かずのベーコンエッグマフィンが白いプレートにサラダと共に盛られていた。




「ううん、ブランチ。俺、朝弱いんだ。」




トーマは、少し罰が悪そうに笑った。




「カノンちゃんはランチ?」




「あ、はい。ちょっとここのお店、気になっていたので…」




「そーなの?…じゃ、注文まだなのかな?」





頷くと、トーマは躊躇いなく店員を呼んだ。


「適当におすすめ、色々持ってきてあげて」



急いでやってきた店員に、トーマがそう一言告げる。



「はい」



店員は返事をして、直ぐに立ち去った。




「あの―…?」



そんなやりとりを真横で見つつ、首を傾げる私。




「…こないだは、大丈夫だった?」




そんな私を知ってか知らずか、トーマは少し困ったように訊ねた。





「…え?」




一瞬、何のことだかわかなかったが、直ぐに思い当たる。


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