不機嫌なアルバトロス
「そっ、その節は、あの、その、なんといいますか、お見苦しい所をっ、す、すみませんでしたっ」




あたふたしながら、私はメニューをテーブルに放り出してトーマに謝った。




「いや、謝るのはこっちでしょう。…タカの悪い癖なんだ。」




トーマは更に眉を下げて肩を竦めた。




「俺の酒を飲みに来る客に声掛けちゃ、毎回あんな感じだからさ。だけど…今回は随分とお気に召したようだね。」




頭を下げた姿勢から、伺うようにトーマを見上げると、彼はにやっと笑った。




「カノンちゃんに会いたいって騒いで五月蝿いよ。おかげでカウンターに誰も寄り付かない。」




楽しんでるんだか困っているんだかわからない表情でトーマはわざとらしく溜め息を吐く。



絶対前者だけど。



返答に困り、私は再度床と対面した。



だって、中堀さんにもうクラブに行っちゃいけないって言われたし、正直タカとは合わす顔もなければ、会いたくもない。
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