不機嫌なアルバトロス
「零も来なくなっちゃってねー。へそ曲げちゃったみたい」




トーマがのんびりと続けた言葉に、私は心が痛む。




違うんです、そうじゃないんです、こないだ休んだのは私がご迷惑をお掛けしたからなんです。




床を見つめつつ、心の中で思うが、口には出せない。





「カノンちゃんはどっちを選ぶのかな?」




突然の思ってもなかった質問に、がばっと顔を上げた。



頭の後ろで手を組みながら、トーマはやっぱり面白そうに私を見ている。





「別にっ、ど、どっちも選びませんっ」




私は全力で否定して、それから小さく付け足す。



「と、いうか、選べません…」




申し訳ないけどタカのことは眼中にないし、中堀さんは振り向いてもくれない。



「失礼致します。」




ちょうどそこへ、店員さんが来て、私のテーブルにパスタとバゲット、スープ、コーヒー、サラダ、等々が次々に並べられていく。




「え、これって…?」





頼んだ記憶のないものたちに、私はただ瞬きをぱちくりと繰り返していた。




「それ、俺の奢り。俺のお店に来てくれてどーもありがとう」




店員さんがお辞儀をして立ち去った後、トーマがニコニコしながら言った。





―俺の、お店?




直ぐには理解できなかった、が。





「えーー!トーマさんのお店なんですか?」




余りの驚きに出た声が裏返った。




「うん。たまに来てね。ま、俺はただのオーナーだけど。」



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