不機嫌なアルバトロス
「ごめんね、私そんなに強く掴んだつもりは…」
「違うの。」
申し訳なさそうに、謝る憲子に私は首を振る。
「これは…違うの。」
コト、と静かな音を立てて、化粧水を元にあった所へ戻す。
暫し神妙な顔つきで、そんな私を見つめていた憲子だが。
「ねぇ、提案なんだけど…家に来ない?」
突然、言い出した。
「え?」
「だって、ここじゃ気が散ってしっかり話せないでしょ?かといってカフェはお腹がいっぱいで駄目なんでしょ?だから!もう家に来て洗いざらい全部話して!」
最初からそうすれば良かった、と憲子はぶつくさ呟いている。
「え、でも私の帽子は…」
「それはまた今度!もしくは必要ないんじゃない?電車通勤なんだし!」
ぴしゃりと打ち消されて、私の久々のショッピングは終わりを告げた。
といっても食材は皆無なので、帰り道に近所のスーパーにはいかなくてはいけないんだけど。
「そうと決まったら、さっさと行くよー!」
憲子は自分勝手に物事を進めて行っている。
私は呆れながらも、頷いて憲子の後に付いて駅ビルを出た。
「さむいっ」
外は半分曇りで、半分晴れている。