不機嫌なアルバトロス
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「あ、、、あなたがっ……欲しいんです…」
掴まれる手の力が、少し緩んだ。
目の前の彼の瞳が、揺れる。
なんかもう、いっぱいいっぱいで、言ってしまったことへの後悔とか反省とか、そんなものすら感じる余裕もなく、私はただ中堀さんを見つめていた。
少しの間、沈黙が流れる。
車が道路を走る音が、やけに大きく聞こえた。
「…それ、どういう意味?」
やがて彼は口を開く。
氷の粒がまじっているかのような、少し突き放したような言い方に、私はやっと我に返った。
―わ、私ったらなんて事を。
「え、、、と…」
だけど、何て返せばいいのかもわからず、早鐘のように打つ心臓のせいで具合が悪くなりそうだ。
「!」
急に手が、解かれた。
間を流れる北風。
それだけで。
全てが終わったかのように思えた。