不機嫌なアルバトロス

何か、言わなきゃ…



そう思うのだが、カーキの帽子の下の中堀さんの冷たい目に、頭が真っ白になってしまって、良い言葉が出てこない。




あ。


帽子…



「ぼ、帽子!!!!」



咄嗟に叫ぶ。




「―は?」



「帽子です!」



小首を傾げる中堀さんに私はもう一度同じ言葉を言う。




「こないだっ、置いていった、、黒い帽子!!!あれが、、欲しいんですっ。そのっ、いただけませんかっ」




ええい、ここまでくればヤケクソだ。

この線で行こう。



「…なんで」



心底ワケがわからないという怪訝な顔を隠す事無く露骨に表わす中堀さん。



そうでしょうね、そうでしょうとも。




でも、後には退けない私。



「そのっ、ちょ、ちょうど!私今帽子を探してましてっ。友達と、、、買い物に行く予定だったのですが…」



言いながらも必死で泣いた理由を考えだす私の頭。




「そのっ、友達と、ちょっとしたことで喧嘩しましてっ」




そう、そうきっと喧嘩したの、私は憲子と。



それでえーと。



「買いにいけなくなっちゃって…中堀さんの帽子、、かっこよかったし、、い、いっかなって」



全然あったかくはなさそうだったけど。


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