不機嫌なアルバトロス
「・・・・・・・」
まずい。
沈黙が痛い。
中堀さんの視線が突き刺さるようだ。
「な、中堀さんこそっ、どうしてこんなところにっいるんですかぁ?!」
しまった。
ナチュラルを装うつもりが。
いつもよりワントーン高い声で、自分自身気持ち悪いし不自然だと感じるものの、どうすることもできない。
「……その、オトモダチとやらが、あんたの名前をでっかく呼んだもんだから、、、」
あれ。
なんか、歯切れが悪い?
途中で言いかけて止める中堀さんを見る。
これは、チャンスだ。
今だ。今しかない。
ずらかろう。
「あっ、じゃ、そーいうことで!考えといてくださいっ。」
私は歩行者用の信号が青になったのを確認し、中堀さんに背を向ける。
「あ、おい、ちょ、待て」
いーえ!待ちません!
「急ぐので!」
引き止める中堀さんを見る事無く猛ダッシュする。
―ここ、どこだっけ。
あぁ、そっか。多分、いつも来たことない場所だ。
無我夢中に走ったから。
駅からもちょっと遠い。
でも駅に戻ると中堀さんの居る方になっちゃうから。
いいや、今日は特別。
中堀さんが見えなくなるまで走ったら、どこかでタクシーを拾って帰ろう。
なんか色々めちゃくちゃごちゃごちゃで、頭の中どっから片付けていいかわからないけど。
仕方ないよ。
とにかく帰ろう。