不機嫌なアルバトロス
========================



「はぁ…」



5時になったのを確認して、身体を起こし、頭を抱えた。



飽きるくらいに、何度も繰り返し考え過ぎて、結局消化しきれない。



私が願ってたのは、こんなことじゃなかった筈なのに。



どこをどう間違って、どうしてあの人に出逢ってしまったのか。



私のことを愛してくれないのに。


完璧に格好良くて。


かなり自然体なのにお洒落で。


詐欺師で。


全然優しくない。




なのに。


好きにならないでいることの方が、難しい。



でも、たぶん。


中堀さんの、突き放すような物言い、冷たい目が、やけにはっきり心に残っている。




「好きって、伝えたら、終わっちゃう…」




暗闇の中で、ぽつりと呟いた言葉は、自分自身にかけた呪いのようだ。






ねぇ憲子。




中堀さんのことを、私が好きにならないように努力しようが、好きになってしまおうが。



結局、どうにもならないみたいだから。



どうせ、前にも後ろにも進めないから。



せめてこの契約期間が終わるまでは。



口には出さないように気をつけるから。



あの人の事を、好きだと思っていても良い?



心底、欲しいという願いだけなら、持っていてもいい?

< 295 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop