不機嫌なアルバトロス
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「駄目」



時刻は12時25分。



会社近くのラーメン屋にて。


ずずずーーっと醤油ラーメンを啜りながら、憲子は即答した。





「な、なんでっ」




自分の頼んだ坦々麺が辛すぎて、涙目になりながら私は訊ねる。




「つけこまれるよ?」



憲子はれんげでスープを掬いつつ、言った。



「そんな人じゃないもん!」



「ほら、洗脳されてる。」



「!ちがっ…」



「相手は真っ当な人間じゃないんだよ?」




―た、確かに。



グッと言葉に詰まる。



「…だけど、、看病とか、、してくれたもん…」



出逢ってからというもの、あの夜が、一番近づいたような気がする。



「しょうがないわよ、役者なんだから。」



当たり前だというように、憲子が言った。



―た、確かに。




私は坦々麺と目を合わす。



「…でも、ちょっと昨日はびっくりしたけど。」



「―え?」



憲子の声に私はがばっと顔を上げた。




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