不機嫌なアルバトロス
実はと言うと、あれから憲子からの着信はいくつもあって。


でも完璧に無視して(私が憲子ならとっくに友達を辞めていると思う)、一人落ちていた。



今朝、更衣室の私のロッカー前で立ちはだかるように待っていた憲子。


昼に話すねという約束をして、散々私だけが話して、憲子の口からは昨日のことについて何も話されては居なかった。



「あの人たち、ちょっと先に居たじゃない?」



飛びついた私に苦笑しながら、憲子は話し始めた。



「…花音は、あの人のことが好きなんだなって、再確認、、、というか。私から見れば、色々思わせぶりな態度を取るカレに腹立っちゃってね。カレは実際のところ、花音のことどう思ってるんだろうって確かめたくなったの。」



へへっと憲子は悪戯っぽく笑った。



「そ、それで?」



続きが気になるじゃありませんか。


「大声で呼んだの。」


憲子は言いながら、冷水が入ったグラスに口をつける。



「―誰を?」


話が全然見えてこなくて、私は眉を寄せた。


「花音を。」


「え、私?」


「少し離れたカレの耳に確実に届くように、ね。」



カラ、とグラスの中の細かい氷が音をたてる。



「それまで、あの女がしがみつくまま、抱き寄せることもなく、そのままにさせてたカレ、どーしたと思う?」



その時の光景を思い出しているのだろう、憲子の笑いが増した。



「わ、わかんない…」



そういうフリいらないから、早く、続きが知りたい。

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