不機嫌なアルバトロス
「俯き加減だったんだけど、すぐにがばって顔上げてさ。私のこと、見た。」
憲子は、氷だけになったグラスをカウンターに置く。
「で、花音の後ろ姿も、まぁ、見えたみたいよ。」
中堀さんの視界に私が居たというだけで、容易く胸がドキリとした。
「首にまきついた女の子の腕をさっと外して追っかけてった。」
ふふふ、と憲子は声を出して笑う。
「女の子は最初呆然としちゃって、途中で慌てて零!って呼んでたけど、もう時既に遅しって感じ。」
そ、それって、、、つまり…
「どういうこと、かな?」
坦々麺にはさようならすることを決意。
私は憲子の横顔を姿勢を正して見つめる。
「さあねぇ。」
なのに、憲子は曖昧な返事をした。
「さぁねって…私はどう判断したらいいの…」
憲子は最大で唯一無二の相談相手なのに。
「でも、欲しいって…言ったら、態度が冷たくなったんでしょう?」
カウンターに頬杖をつき、憲子は途方に暮れた顔をする私を見た。
「う、うん…」
「まぁ、欲しいって…すごい台詞だよね…」
憲子が苦笑いする。
「それは…私も、そう思った…」
「だけど、それが却って苦しい言い訳には役立ったわけだけど、ね。」
反省する私に憲子は呆れたように溜め息を吐いた。