不機嫌なアルバトロス
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まだ、静まり返っているグランドに入ると、靴が砂埃で汚れた。
―中堀秀俊さんが、、事故で亡くなりました。
俺の所に連絡が入ったのは、一週間位前か。
なぁ、アンタはほんと、御人好し過ぎてて、笑えないんだよ。
道端の仔猫なんか、どうせ生きてたって、親が見放したら死んじまうんだよ。
ふらふらと道路に出ちまったそいつを庇うことなんか、ないんだよ。
その為に、アンタが死んじまったら、困る奴哀しむ奴、沢山いるんじゃねぇの?
だから、俺はアンタが嫌いなんだよ。
野良猫の事なんか…
…俺のことなんか、放っておいてくれれば良かったんだから。
水色に塗られたジャングルジムは、錆だらけになっていて。
握ると鉄が手にこびりついた。
「低…」
一番頂上まで上って、思わず呟く。
もう、どのくらいここに来てなかっただろう。
子供の時に感じたてっぺんへの達成感は、大人になると残っていなかった。
何でそこに変わらずに空はあるんだろう。
他の全てのモノは、形を変え、廃れていくのに。
全部見ているような顔して、本当は何も見ていないんだろ?
だから、そうやって、いつも澄まして俺を嘲笑うんだろ?