不機嫌なアルバトロス
詐欺師の憂鬱ータイムリミットまであと5日ー
クラブの屋上の手すりに背中を預けて空を仰いだ。
吐き出した煙草の煙が、高くなった月にかかる。
今夜は星がきれいに見えるのに、それを台無しにしてるのは自分か、と思った。
電話を切ってから、どれ位の時間が経ったろう。
ふと時間が気になって、腕時計に目をやると、日付が変わっていることに気付く。
「…まずいな」
零の時間は過ぎてしまったわけか。
ということは、下ではちょっとした騒ぎになってるのかな。
「ま、いっか」
ひねた笑いで、呟く。
零のサボり癖は昔から有名な話だ。
階段を駆け上る音がしたな、と思ったら続いて、
「零ー??」
俺を呼ぶ女の声がした。
「ねぇー!零ー?零ってば!あ、いた!」
見つかった。
俺は逃げるワケでも、そっちの方を見るわけでもなく、ただ空を見たまま、煙草を深く吸い込んだ。
「ちょっと、返事くらいしてよねっ。皆下で探してたよー?」
ぷりぷりと怒る小さな黒髪の女をちらっと見て、
「うるさい」
とだけ、返した。
「うわ、ひどっ!」
でも、この女はめげない。