不機嫌なアルバトロス
『え…?』



意外そうな顔で、二人が俺を見て。



『…いや、なんでもない…』



はっとした俺は言葉を濁すと、その場を立ち去った。



外に出ると雨が降っていて、言い様のない苛立ちを抱える俺を、少し冷静にしてくれた。



冬の雨は驚くほど冷たくて、静かだけれど残酷に思えた。




―俺、どうかしてんのかな。



出た所で立ち尽くし、雨に打たれるままになりながら、自分の異変に気付く。




崇と燈真の驚いた顔には、心当たりがあった。



俺は今まで誰かに執着したことがない。



得に目の前で誰かに触られたモノは論外で。



更にその相手が崇なら尚の事。



だから。



まだあの女のことを気にする俺に、二人は驚いたのだ。
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