不機嫌なアルバトロス
カラ。
いつの間にか、グラスは空になって、中の氷が溶けている。
「零、お代わりは?」
燈真がそんな俺に気付いて声を掛けてきた。
相変わらず崇は隣で不貞腐れている。
「…いや、いいや。ちょっと、、仮眠、取ろうかな。上のソファ、借りていい?」
席から立ち上がって、燈真に訊ねた。
「いいけど。珍しいね?」
意外そうな声で、燈真が答える。
俺だってそー思う。
夜は、毎晩、眠れないから。
仮眠なんて以っての外、なのに。
ましてや、たったグラス1杯なんかで。
カン、カン
音を立てて鉄の階段を上り、二階のスタッフルームの鍵を開けた。
打ちっぱなしの壁の部屋に、誰も居ないのを確認すると、内鍵を閉め、腕時計を見る。
22時40分、か。
真ん中に置かれたスモーキーレッドの革張りソファにどかっと腰を下ろして、結局俺は目を瞑ることなく、ぼんやりと天井を見上げた。
「なんで、会いに行ったんだろうな…」
―なんで、あんなことしたんだろ。